記憶術
【記憶術の意図は次の通り。(1)目的の記憶を想起するための範囲を「予知」すること、(2)知的な想念を記憶しやすいように、感覚的な映像で「象徴」すること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))】記憶術の意図は次の通りである。
(1)予知:目的の記憶を想起するために、どの範囲を探し求めれば良いかを、あらかじめ知ること。
(2)象徴:知的な想念を、感覚的な映像に変換することにより、いっそう記憶に残るようにすること。
「この記憶の術は、二つの意図に基づいてうちたてられるものにほかならない。その一つは、予知であり、もう一つは象徴である。予知〔われわれが想起しようと思うものをどこにさがし求めたらよいかをあらかじめ知ること〕は、想起しようと思うものをあてどなくさがす労を省き、狭い範囲内に、すなわち記憶のありかにぴったりあっているものをさがすことを教えてくれる。つぎに、象徴は知的な想念を、感覚的な映像にかえてしまうのであるが、このほうがいっそう記憶に残るのである。予知と象徴の準則からは、いま行われているよりもずっとすぐれた記憶術を引き出すことができるであろう。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第二巻、一五・三、p.233、[服部英次郎、多田英次・1974])
(索引:記憶術、予知、象徴)
(出典:wikipedia)
「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかである。というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむからである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考えられたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)
フランシス・ベーコン(1561-1626)
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